平安武久の兜。その中において特殊な製作方法で仕立てた最高級品の兜です。
本革を細かく短冊状に制作した小札、そしてそれを本漆で塗り固めた本小札の作りです。平安武久における仕立てととして「本小札」という名称で制作したのがこの兜です。
この兜には、「手打ち鍬形」や「根来塗櫃」など武久の兜の製法としての最上級の製法を惜しみなく注いでいます。
〜本革小札・本漆塗小札〜
飾り用の兜の作りは、小札は金属の板をプレスして作りますが、本来、兜はそのようには作られません。
鉄や金属だけでは重過ぎるため、強度と軽量化を両立できる革を甲冑の部品に使います。小札と呼ばれる小さな部品を無数に使うのですが、その小札を本革でつくることで軽量化と強度を、漆を塗り固めることでさらに強固にしています。
〜手打ち鍬形〜
一般的な兜の鍬形は、無地・鏡面・柄入りなどいくつかデザインがありますが、京甲冑では基本的に鳥の羽の柄が無数に打ち込まれます。
大きな真鍮や鉄の板に、羽の柄を機械でプレスして模様を打刻し鍬形の形にカットすると羽根の模様もカットされます。
しかし、手打ち鍬形の場合は、鍬形の形にカットしたのちに、鍬形の形に添って一つ一つ羽模様を手打ちすることで、鍬形の形状にそって模様が並ぶようになります。また、板から手切りで鍬形の形状を切り出す際に面取り加工等も同時に行い、より綺麗な形状を形成します。
〜根来塗櫃〜
兜を収納する櫃は、根来塗りで仕上げられます。根来塗りとは黒漆を塗ったあとに朱漆を塗り重ねます。経年により朱漆が摩耗して黒漆が見えて模様になる状態を再現しそれをデザインとして表現します。
漆の深い色を利用した重みと質感を感じられ、兜の美しさをより一層引き立てるしつらいになります。
また、武久の櫃の飾り金具は全方向に取り付けられ、素材には銅を使います。一般的なアルミのプレス金具を前面のみに取り付ける櫃とは違うこだわりが見て取れます。
鮮やかな赤のベルベットを貼った正方形の飾台に、主役の兜をのせます。そして背景には、薄く円いアクリルの板の内部に、ピンクのグラデーションと水泡のような加工がされた爽やかな衝立を置きます。
兜を新しい視点で飾る素敵な五月人形です。