小出松寿 京十番 京極手刺繍 正絹着尺 「うつつに華桟敷」

松よし人形では、極上の着物を解いて反物状に戻し、そこから良い部分を選び取って雛人形を作るという、特別な作品があります。 そのためには良い着物を仕入れる必要があり、またその着物一着から贅沢に良い部分のみを使うという行程があり、 そのようにして作られる雛人形は１〜２セット程度が限界という現実があります。 そして、まさにこの雛人形こそが、そのお雛様なのです。

様々な理由から、雛人形の大きさは年々小さいものが作られる用になってきています。 しかしながら、本来の雛人形とはある程度の大きさがあってこそその美しさが表現できるものでした。たとえば、衣装であっても、お人形がある程度大きければその分表現する範囲が 広くなりますし、お顔の細かさでいっても、より綺麗に美しい陰影や抑揚が表現できます。 この「京十番」という規格は、雛人形でいうと標準サイズといわれており、飾り幅が75cm〜90cm位で飾るのが綺麗な大きさです。 標準サイズと呼ばれる所以は、美しさを表現できる「ある程度の大きさ」がこの京十番だからだと言われています。 もちろん、これよりもサイズの小さい「京十一番」や「小三五」「芥子」などの規格であっても、多くの人形作家は美しく作品を仕上げています。しかしそれでも、京十番の美しさ・綺麗さ バランスの良さにはかなわないのです。

同一の着物から作られた一組の雛人形。 構図をしっかり計算された衣装づくりによって、柄の出方やグラデーション、濃淡の表現がとても綺麗に表れています。 殿は肩の白から裾の紺へ、姫は肩が紺で裾が白へと地色が変化します。殿の柄は華やかにたくさんの花が配置されますが、姫は特に手の込んだ花をインパクト強く表現。 殿姫同じ生地であってもその見せ方に違いを作り、統一感を持たせつつも違った表現がなされています。

こちらのセットでは、様々なお道具を並べています。お花飾りの赤いポンポン菊は強い発色があり、一般のお雛様は負けてしまうのですが、 このお雛様には逆にアクセントになってくれています。
また、中央の「紅玉（べにだま）」はその昔、口紅を入れていたお道具ですが、こちらも上下で紅白を象徴する綺羅色の陶器を組み合わせました。
手描きの梅が描かれた雪洞は、青い梅という創作の花を入れ、このお雛様に相応しい雪洞にしたてています。